「地域医療構想と地域医療連携」講演会実施
『松本2次医療圏の地域医療構想と慈泉会の考える地域医療連携』
アポプラスステーションでは、製薬会社様向けに有用な情報提供の一環として、2月7日(金)に地域医療連携をテーマに講演会を実施いたしました。
地域包括ケアシステムの構築が急がれ、病院機能の見直しが論議されており、9月に発表された「地域医療構想に関するワーキンググループ」について公表された資料が大きな反響を呼んだことは、記憶に新しいと思います。また、2020年度の診療報酬改定の方向性が明確になりつつあるタイミングの中で、「地域医療構想と地域医療連携」というテーマで、社会医療法人財団 慈泉会相澤東病院の病院長、事務長、地域医療連携室、医療福祉相談室の立場から具体的な取り組みについてご講演をいただきました。
はじめに『松本2次医療圏の地域医療構想と慈泉会の考える地域医療連携』として社会医療法人財団 慈泉会相澤東病院 院長 宮田 和信 先生より、進行中の地域医療構想の現状と慈泉会の考える地域医療連携についてご講演いただきました。それを受けて、医療連携センター センター長、相澤東病院 事務長 池田 隆一 先生より「診療報酬からのメッセージ」、相澤病院・相澤東病院 地域連携センター 地域医療連携室 課長 小松 正紀 先生より「地域医療連携の視点から」、最後に相澤東病院 看護部 医療福祉相談室 課長 看護部 入退院・在宅支援室 堀内 寛之 先生より「退院支援の視点から」と医療連携の実務にかかわっておられる方からのご講演をいただきました。
各講演要旨は以下の通りです。
宮田先生より先ず、2040年に向けた三位一体改革「地域医療構想」「医師の偏在対策」「医師の働き方改革」について、その背景と現状について講義していただきました。
地域医療構想調整会議にて2次医療圏単位で病床機能、必要病床数の検討が始まっており、全国で急性期病床を減らし、回復期病床を増やし、慢性期病床は在宅に移行することを目的に削減する流れは、各医療圏でも計画されています。単に7:1の看護体制を取っていても実際に重症患者、救急車を受け入れ実績が無い病院は、機能転換や再編成が求められており、公立病院と民間病院の機能が重複する地域では、民間病院に任せることも検討されています。既に県によっては、県立病院機構の中で調整する動きが始まっています。
医師偏在の是正策として偏在指数を計算し、都道府県と大学病院が協力して医師偏在、特に産科と小児科を最重点課題としての解消に取り組んでいますが、現実的には様々な課題があります。一方で、外来診療は開業医が多い地域では過剰となっており、今後の開業にあたっては、いくつかの条件を付けることが検討されている現状について説明をいただきました。
最後に医師の働き方改革としての時間外労働、勤務時間インターバルへの対応の課題があり、今回の対応では、医師は5年間の猶予がありますが、他の職種は既に対応が求められています。今回の診療報酬では、医師のタスクシフトが取り上げられましたが、看護師をはじめ他の職種の方を雇わなければ対応できません。5年後には医師を含め、スタッフが大幅に不足することが予想されます。
その中で、慈泉会として「あるべき姿」を明確にして、相澤病院は24時間365日対応の救命救急センター、地域医療支援病院、がん拠点病院として高度急性期~急性期病院に特化し、相澤東病院は地域包括ケア病棟として地域包括ケアシステムを構築しています。更に、地域在宅医療支援センター、サービス付き高齢者向け住宅を含めた「街づくり」に取り組んでいる状況をご紹介いただきました。
続いて、池田先生より「地域医療構想」の中で公表された「公立・公的病院の再編統合の考え方」を踏まえて、病棟の再編成、病床機能の変更の流れが、診療報酬の改定などを通して確実に進んでいる状況についてご講演いただきました。その中で、従来の出来高払いでは「なるようになる」という考えが通用していましたが、DPCが導入後はそれでは成り立たず、他病院との比較、自院のベンチマークを病院の各部門で見直し、改善していくことが重要であることを紹介いただきました。MRの皆さんには、自社製品についての情報に加えて、企業として入手している全国の地域医療構想や地域医療連携病院の状況などの情報も提供していただけることを期待していますと、製薬会社、MRへの期待で締めくくられました。
また、小松先生より、平成10年より取り組んで来られた地域医療連携室についてご講演いただきました。地域の最後の砦として24時間365日入院が必要な患者さんは全て受け入れ、紹介患者さんは紹介元に必ず返す取組により、現在では454施設、538名の登録があり、地域医療に一緒に取り組んでいただいています。MRの皆さんの中には、病院のパスに組み込まれていれば薬が増えると考えている人もいるようですが、相澤病院、相澤東病院ではそれまで処方されている薬剤は、変更することなくそのまま処方し、必要に応じて臨時採用しています。また、退院時には退院後の施設に合わせた処方を原則とし、そのためにできるだけ薬局の参加も依頼しています。ポリファーマシー、残薬の対策には、薬局が連携のキーと位置付けています。地域医療連携では、縦割りの強制では無く、顔の見える連携、競争ではなく協調を心がけて来た取組についてお話いただきました。
最後に、堀内先生よりメディカルソーシャルワーカー(MSW)の関与について、後方支援の立場から退院後に地域の中で暮らしていくための取組についてご講演いただきました。高齢独居生活、老々世帯、生活困窮といった生活に課題を抱えた患者さんの入院が増えており、かかりつけ医、ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー、デイサービス、病院の担当医師、看護師、リハビリテーション、MSWといった多職種による連携により、退院後はどんな暮らしがしたいか、本人の希望を確認しながら対応した取組について2つの事例を元にご紹介いただきました。
地域医療構想による病院機能の見直し、地域医療連携が進む中で、様々な立場の方たちがかかわり地域包括ケアシステムが構築されつつあります。医療現場が求めている情報は、どんなものがあるか、医薬情報担当者(MR)としてどうかかわることが求められているか、改めて考えさせられたご講演でした。 ご講演中及びその後の情報交換会にて、参加者の率直な質問にも真摯にお答えいただきました講師の先生方に改めて御礼申し上げます。また、当日は、多くの製薬会社の方にご参加いただきましたことに感謝いたします。
アポプラスステーションCSO事業部では、「医療現場から求められる医薬情報担当者(MR)」の育成を使命として、専門MR育成と並んで医薬情報活動に有用な情報提供の一環として講演会を実施しております。自社で製品を持たない「CSOならでは」の立場で、今後も製薬会社様のお役に立てる講演会を企画していきます。
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